「休日にバイクに乗って出かけたら、事故に遭って全治3カ月・・・。」「体調悪いと思ったら癌だった。まだステージ1だから良かったけど、手術のため入院することになった。」
いつ、誰の身に、どのようなことが起こるかわかりません。事故に遭ったり、病気が見つかったりして、長期にわたって仕事を休むことになるかもしれません。
そして、長期にわたって仕事を休むと、有給休暇がなくなり、給与が受け取れなくなってしまいます。これは大変なことですよね・・・。でも、安心してください。傷病手当金という制度があります。ケガや病気で働けなくなり、給与が得られない時に、生活をサポートしてくれる手当金です。
今回は、傷病手当金について紹介していきます。
傷病手当金の概要
傷病手当金は最長1年半、18回申請が可能です。では、具体的な手続きや支給額について紹介していきます。
傷病手当金の受給条件
傷病手当金の受給条件は
- 業務外の傷病であること(業務内、通勤途中の場合は労災の扱いとなります。)
- 労務不能であること
- 3日連続で休んだ(待期期間)後にまたそれ以降も休んだこと(※)
- 休業した期間中、給与の支払いを受けていないこと
上記の4点を全て満たしていれば、申請可能です。
※待期期間の考え方
待機期間中は傷病手当金が支給されません。待機期間が終わってから支給となります。
<待期期間が完成となる例>
例1 欠 欠 欠 欠 欠 → 3日連続して休んでいるため、待期期間が完成し、4日目から支給される。
例2 欠 欠 欠 出 欠 → 4日目に出ているが、その前の3日間は休んでいるため、待期期間が完成し、5日目から支給される。
例3 有 公 欠 欠 欠 → 休みは公休、有休、欠勤等、種類は関係ないため、この場合も待期期間が完成し、4日目から支給される。
<待期期間が完成とならない例>
例 欠 欠 出 出 欠 → 3日連続して休んでいないため、この場合は待期期間とみなされない。
傷病手当金の申請方法
傷病手当金の申請にあたり、会社と医師からの証明も必要となります。また、場合によっては添付書類が必要となる場合もあります。詳しく見ていきましょう。
申請に必要な書類
1.傷病手当金支給申請書(被保険者記入用1)
こちらは、被保険者の氏名、生年月日、住所、電話番号、傷病手当金の振込口座情報を記入する用紙です。
2.傷病手当金支給申請書(被保険者記入用2)
こちらは、傷病の詳細、申請期間中に報酬を受けたか、他に年金や手当金を受給しているかを記入する用紙です。
3.傷病手当金支給申請書(事業主記入用)
こちらは、会社の担当者が、被保険者が何日欠勤して、何日公休だったのか、給与を支払った場合は給与額と給与額の計算方法を記入する用紙です。
4.傷病手当金支給申請書(療養担当者記入用)
こちらは、医師が被保険者の状況、症状、治療の詳細を記入し、労務不能であると証明する用紙です。
以上の4枚の用紙を、全国健康保険協会のホームページからダウンロードし、記入して、被保険者自身の都道府県管轄の全国健康保険協会に郵送します。どのように書類をやりとりして、全国健康保険協会に郵送するかは、会社の担当者と相談してください。
添付書類が必要となる場合
下記に当てはまる場合は、上記4枚の申請書の他に添付書類が必要となります。
- ケガの場合(第三者によるものではない場合)・・・「負傷原因届」
- 第三者による傷病の場合・・・「第三者行為による傷病届」
- 被保険者が亡くなった場合・・・被保険者と相続人の方の続柄がわかる戸籍謄本等(被保険者が亡くなった場合は、相続人の方が代理で申請を行います。この場合、1枚目の被保険者用の申請書には、生年月日以外は被保険者の情報ではなく、相続人の方の情報を記入してください。)
- 障害厚生年金を受給している方・・・・以下の3種類の書類
- 障害厚生年金給付の年金証書(コピー可)
- 障害厚生年金給付の額、支給開始年月を証明する書類のコピー
- 障害厚生年金の直近の額を証明する書類(年金額改定通知書等)のコピー
「負傷原因届」と「第三者行為による傷病届」は全国健康保険協会のホームページからダウンロードが可能です。
もし、会社を退職したら?
会社を退職した後も、1番最初に傷病手当金を申請してから1年半までは、傷病手当金を申請することができます。その際は、被保険者記入用の申請書2枚と療養担当者記入用の申請書1枚の計3枚を、自身がお住まいの都道府県管轄の全国健康保険協会に郵送してください。
その際、傷病手当金支給申請書の被保険者記入用1の、被保険者証の記号と番号は、その退職した会社の保険証の記号番号を記入してください。(会社に保険証を返却する前に、保険証のコピーを取っておくことをお勧めします。)
注:社会保険を任意継続した場合、任意継続の保険証が新たに交付されますが、その新たに交付された保険証の記号番号ではなく、退職した会社の保険証の記号番号を記入してください。
また、退職した方で老齢退職年金を受け取っている方は、以下の3種類の書類を添付してください。
- 老齢退職年金給付の年金証書またはこれに準ずる書類(コピー可)
- 老齢退職年金給付の額、支給開始年月を証明する書類のコピー
- 老齢退職年金の直近の額を証明する書類(年金額改定通知書等)のコピー
傷病手当金の支給額
傷病手当金の支給額は、傷病手当金申請前1年間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3となります。標準報酬月額とは、自身の給与額をもとにした社会保険料のランクです。詳しくは、全国健康保険協会のホームページをご覧ください。
例えば、1ヶ月の給与が20万円で固定の場合、標準報酬月額の平均は20万円となります。よって、200,000円÷30日×2/3≒4,444円が1日当たりの支給額となり、1ヶ月間給与の支払いがなかった場合は、4,444円×30日=133,320円となります。
出勤していた時に受け取っていた給与額の2/3が受け取れる形ですね。
もし、傷病手当金の申請を希望する方が入社して1年未満の場合は、入社してから標準報酬月額の1カ月の平均が30万円以下の場合はその標準報酬月額で、30万円を超える場合は3標準報酬月額の平均が30万円ということで計算されます。
まとめ
人はいつ、どうなるかわかりません。
「きちんと歩道を歩いていたり、信号を守って横断歩道を渡っていたりしたのに車が突っこんできた・・・」「車を運転していて、信号待ちの時に後ろから追突された・・・」(最近は交通事故のニュースが本当に多いですよね。)
「上から何かが降ってきた・・・」「いきなりタチの悪い人に襲われた・・・」(ちなみに、私は会社員時代に電車に乗っていたら、いきなり見知らぬ外国人に鞄で殴られたことがあります。けがは無かったので良かったですが・・・。)
体調が悪くて病院に行ったら、ガン等悪い病気が見つかった・・・
転職したら、転職先でパワハラをされて、精神を病んだ・・・
・・・未来のことは誰にもわかりません。
しかし、万が一そのようなときに、最初の方で述べた
- 業務外の傷病であること
- 労務不能であること
- 3日連続で休んだ(待期期間)後にまたそれ以降も休んだこと
- 休業した期間中、給与の支払いを受けていないこと
を満たしていれば、この「傷病手当金」は強い味方になってくれますよ。
支給金額は出勤していた時より2/3と減りますが、何も収入がないよりは断然良いでしょう。
また、被保険者記入用の書類2枚は、「被保険者記入用」となっていますが、被保険者が書かなくても代理人の方で大丈夫です。
※被保険者本人が記入する場合は、三文判の印鑑の捺印は省略しても大丈夫ですが、代理人が記入する場合は、三文判の印鑑の捺印が必須となります。
働けなくなった時に、頼れる家族等がいたら、頼りましょう。
みなさん、何もなく無事に、健康に過ごせることは当たり前ではないんですよ。
日常があることに感謝しましょう。