これまで経験として、会社から一方的に給料を下げる旨の契約変更を経験されたり、また知らない間に給料を下げられていたということはありませんでしょうか。
これは、労働法においては不利益変更というもので、きっちり法律において規制がなされています。
では、この不利益変更について労働法においてはどのように定められているのか、またどのように対処していけばいいのか現状に即したお話をさせて頂きたいと思います。
不利益変更とはどのようなもの?
不利益変更も含めた労働契約の締結、変更、解消については労働契約法という法律の中で運用されることになります。
そして労働条件における不利益変更というのは、会社が、従業員に対してにとって一方的に不利益な労働契約に変更することを意味しますが、どういったケースが合法的な変更で、どういったケースが非合法になるのかというのは労働契約法に基づくこととなります。
では、労働条件の不利益変更はどういった場合が合法的になるのかというと下記2点が満たされている場合に可能となります。
労働者と使用者の合意により、不利益変更を行う場合
労働契約法では、労働者に不利益な契約変更については、合意が必要な旨が記載されています。
裏を返せば、従業員と会社の間で一度交わした約束については、双方に合意がない限りは不利益な形で変更をしたいと考えていたとしても認められない、変更できないということになります。
契約社員や派遣社員のような契約期間の定めがある場合は、契約更新のタイミングで契約内容を変更することは可能ですが、正社員においては労働契約期間に定めがないのが通例となりますので、入社時の契約内容というのは、会社を退職するまで継続することとなります。
そのため、月収を下げたいという会社から従業員に対して命令をすることはできません。労働者の合意が必要となるということになるのです。
つまり、年収ダウンの提示に関しては、労働者が嫌だといえば会社はそれを執行することができないということになるのです。
就業規則の変更によるもの
労働契約の変更がなかったとしても、会社が就業規則を変更した場合には、結果的に労働条件の不利益変更が発生するケースというのもあります。
労働基準法では、就業規則の変更に関しては、従業員の意見を聞くのみ、承認までは必要ではないという形になっておりますが、労働契約法では不利益変更が発生した場合は以下のいずれかの条件がクリアしていないと不利益変更は認められないとされています。
- 労働者全員の同意
- 社会的合理性が認められる
上述でもお伝えしたように、労働契約の不利益変更に関しては、従業員の合意が必要というのが大原則です。
就業規則の変更に伴う不利益変更の場合は従業員全体の合意が必要となるとしているのが労働契約法の見解となっています。
ただし、例外もあります。従業員から総同意がなかったとしても、合理的かつ社会的な相当性があると客観的に評価される場合は総同意がなかったとしても不利益変更が認められるということになります。
ただし、合理的で、社会的に相当性があるかどうかというのはなかなか判断が難しく、総同意がない場合で不利益変更を実施した場合は、誰が合理的かつ社会的な相当性があるのかを判断するのかというと裁判所で、話し合いによっても歩み寄りができなかったとしたら、最終的には裁判で決着をつけることになります。
なお、補足になりますが、労働組合のある会社であれば、労働組合と会社が締結する労働協約は就業規則より優先性があります。
そのため、いわゆる労働組合と会社がズブズブの関係であれば、労働協約を用いて実質的に不利益変更が行われるということもあるのです。
不利益変更にありがちなトラブルとその解決法
では、具体的な不利益変更のトラブル事例とその解決法についてご紹介をいたします。
自分は合意していないのに、会社が強引に給料を下げるケース
。
もしも、合意が成立ていないのに、会社が強引に不利益変更をするのは中小企業で実施されるケースもありますが、当然これは違法です
合意のないままを不利益変更をするのは未払いと同じことなので、一方的に下げられた給与の差額を受け取れるというのが原則になりますので会社にその差額を請求しましょう。
仮に、それでも支払われない場合は労働基準監督署や弁護士に相談することが必要となってきます。
自分が知らないところで就業規則が変更されていた場合
就業規則の変更については労働者の同意が必要となりますので、周知しないというのはいうまでもなく違法です。経営不振などを理由に、給料、退職金、賞与などの規定変更が知らず知らずに変更されているケースもありますが、この場合の変更は法的に無効となり、変更前の規定にのっとったお金が支払われなければなりません。
この場合も労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
無理やり不利益変更を同意させられた場合
会社から不利益変更に対し、雇用をちらつかせ同意を無理やりさせられるケースもありますが、この場合は、民法における脅迫や錯誤などが適用されることになりますので、無効・取り消しうる契約ということになります。
この場合は形而上契約行為が行われているため、弁護士に相談する事項になります。
不利益変更に該当しないケースについて
不利益変更に類似しているものの、法的に労働条件の不利益変更と認められないケースもありますので、その点についても説明をいたします。
就業規則等に定められたルールに基づいて行われる労働条件の引き下げ
就業規則において、人事評価が悪くて、給与が下がるなどのルールを設定しているケースは一般的にありますが、その旨就業規則に記載されて、ルール通りの運用がなされていたら、それに基づいて、給与が下げられる、賞与が低くなったとしても不利益変更とみなされません。
不利益変更は承認なしに、また一方的に労働条件を下げられた場合、またその大本となる就業規則の一方的な変更については不利益変更になるものの、ルールに決められた通りの対応については、就業規則の内容そのものが無効となるような内容でない限り、問題はないとしているのが法律的な見解となります。
懲戒処分による労働条件の引き下げ
会社に故意・過失で損害を与える、または犯罪行為などで懲戒の対象となった場合も、処分内容が就業規則に記載されていることが前提となりますが、労働条件を引き下げても損害を与えた場合や、私生活上であっても犯罪を行い有罪が確定した場合などは、会社は就業規則に基づいて懲戒処分を行うことができます。
そして、それで給与が下げられたとしても不利益変更には当たらないのです。
労働条件の不利益変更については就業規則の内容と就業規則の変更そのものが重要
色々お伝えしましたが、基本的な考え方としては、就業規則に書かれていないような、就業規則に書かれているとしても常識的にNGではないような労働条件の不利益変更をされる場合、また就業規則変更そのものを従業員の同意なしで実施した場合というのは労働契約法に反する行為となりますので無効となり、そこで発生した不利益に関しては会社に請求することが可能となります。
逆に、就業規則にしっかり記載されている内容で、常識的な内容であれば給与や賞与を下げられるとしても全く問題がないということになります。
以上のルールをまずは認識しましょう。
そのうえで、労働条件の不利益変更については、あってはならないものです。しかし、現状として、一族企業を中心に当たり前の行われている現状もあります。
こういった状況に対しては、とにかく労働基準監督署、場合によっては弁護士に相談しましょう。そして、できることなら転職し環境を変更させるということも大事であるといえます。
あってはならないことですが、そういったことがあった場合の対応を知っておくということが重要だと認識していただけたらと思います。
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