給与明細にみなし残業が入っている方もおおいでしょう。みなし残業と聞くと給料を搾取されているようなイメージを持たれる方も多いでしょう。
確かに、そういったあこぎなことをしている会社ある一方、正しくみなし残業を運営している会社があるのるのも事実です。
なぜ、企業は最初から残業代を組み込むみなし残業を導入しているのでしょうか。
そして、正しいみなし残業とは何なのか、あこぎなみなし残業を運営をしている会社との違いは何なのかを説明いたします。
みなし残業の基礎知識
ではみなし残業という制度について説明いたします。
みなし残業とは
みなし残業とは、労働時間が管理しきれない営業職のような仕事に対し、また給与計算の工数削減、および残業手当ての金額を安定させるようにするためにあらかじめ理論上の残業手当てを組み込み、給与を支払うというものです。
みなし残業を導入する背景
みなし残業を導入する背景は、上述の通りですが、給与計算の負担を減らすため、また営業職のように外出が多く、管理監督者となる上司の目の届かないところで仕事をすることが多くなるため理論上の残業代を予め支払っておくというのが本来の立て付けです。
そのため、みなし残業というルールそのものには問題があるわけではなく、労働者、および会社側双方にとってメリットがあるものなのです。
みなし残業を悪用する事例
しかし、残念ながら、みなし残業の評判がよくないのはこのルールを悪用し、適正な運営をしない会社が残念ながら一定数あるからに他なりません。
では、どんな事例が悪用に該当するのかというとポイントは2点です。
まず、1点目に挙げるのは、みなし残業の残業超過分の残業代を支払わない例です。
法的にいえば、みなし残業の労働超過分については、残業代を支払わなければなりません。
しかし、これを支払わない会社は数多くあり、みなし残業という制度が悪評を呼んでいる事実があります。
2点目に給料の水増しです。
例えば時給1000円として、みなし残業50時間の入った給与がどうなるのかというと以下の通りです。
時給1000円×8時間×20日(1か月の労働事件)=16万円
8時間以上の労働の場合、時給に1.25倍が換算されるため50時間のみなし残業を付けた場合以下の分がみなし残業代で加算されます。
1000×1.25×50=6万円2500円
すると、月給は22万円2000円となります。
ちなみに年収にすると以下の通りです。
22万円2500円×12ヶ月+賞与4ヶ月分(みなし残業抜きの16万円×4で換算)
すると340万円ほどの年収換算になります。ありがちな理論年収がバイトの時給並みの金額でもそれ相応の金額になってくるのです。
事業外みなし労働制の悪用
外資系のメーカーのように、会社に行かずとも家と現場の往復で仕事をしている方は、労働時間の計算が不可能なので、残業代を営業手当という形に変えて残業代を一切つけない、もしくはみなし残業で賄うケースもあります。
この制度を採用する場合、以下のような場合だと成立しないのですが、中には以下に該当するにも関わらず事業外みなし労働制を導入している会社もあります。
- 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
- 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
- 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合
ある意味一番悪質なやり方かもしれません。
内定通知書から悪質性を判断しよう
では、悪質なみなし残業なのか、ルール上正当なみなし残業なのか実際に転職活動でオファーをもらった場合の判断方法を説明いたします。
みなし残業=悪という先入観をもたない
上述でもお伝えいたしましたが、みなし残業はかならずしも搾取の方法ではありません。
確かに、みなし残業をいれることで、本来低い給料に下駄をはかせ、さもそこそこの年収に見せることのできる施策ではあります。
しかし、本質的には、管理しきれない労働時間に対してあらかじめ残業代を付与することで、より効率的な労務管理を行うことができる、また煩雑化する労働時間管理の負担を軽減し、あらゆる方が効率よく働けるような施策です。
問題なのはそれを悪用して都合よく給与を圧縮させようという経営の体制です。
そういった労働を搾取する会社かどうかを見極める力を醸成させることが大事であると認識してください。
時給換算をしてみましょう
まず、内定通知書をもらったら時給はいくらなのかを計算しましょう。
どうやって算出するかですが、1日の労働時間を8時間、月の営業日数を20日、みなし残業30時間として計算します。そして時給を⒳と置きます。
⒳×8(時間)×20(日)+⒳×1.25×30(時間)=月給
197.5⒳=月給
月給÷197.5=⒳
ここで算出された⒳こそが時給ということになります
目安としては時給1013円を切るか切らないかがひとつの目安だとお考えください。
なお、1013円というのは、金額は東京都の最低賃金(時給)です。東京のアルバイト以下の賃金で働いているというのは問題であると考えてもらえたら良いでしょう。
ちなみに、正社員採用され働いている方で、この最低賃金以下の方は割と多いです。
今一度自身の給与を時給換算してみることをおすすめいたします。
労務管理の仕方を認識しておこう
労務管理上、みなし残業20時間と仮定し、それを越えた、その分の残業代は支払われなければなりません。
それがなされない会社は労務管理上アウトであるのは当然ですが、もう1つみておきたいのは、かならず月間残業を20時間しなければならないかどうかです。
無駄な残業を推奨する会社は限界までとにかく残業をさせます。
そういう会社は得てしてみなし残業時間を越えての残業をしたとしても1円も払わない傾向があります。
しかし、仕事が終わればみなし残業給与に付与されていても早く帰れば良いという会社であれば、生産性の高い仕事をすることができます。
しっかり時間を自らである程度コントロールできる会社のほうが当然といえば当然ですが良いと言えるのです。
働く上でお金は重要な要素!自分の給料をしっかり把握しよう
みなし残業は採算説明した通り、その制度そのものは悪い制度ではなく、むしろ労働基準法の制度にのっとり、かつ多様化していく働き方に対し、柔軟性をもたせたルールであると言えます。
ただし、このルールを悪用する経営者がいるからこそ問題なのです。それに対してできることは、転職するタイミングにおいて、また自身の現状において自らの給与を時給換算することです。
時給換算すれば、違法性を認識できるのはもちろんのこと、自らに対し会社がどのような価値であると考えているかどうかがわかります。
その価値を適正ととらえるのか、そうじゃないのか、また転職市場が出した価値に対してどのように捉えるのかは本人次第ですが、価値を低く見積もられているのならば、価値をあげるための努力しましょう。
同様に、時給換算は、体質を見破るための防御手段であると言えます。もしも、時給換算をして、著しく低い給与を提示された場合はそのオファーを断るというのも大事なことです。
みなし残業の本質、および自分の本当の給与を認識してキャリア形成をしましょう。
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