転職して会社を辞めたいという方が試用期間中に「本採用になる前に辞めたい」とお考えになることが案外多いです。
中には次の会社が決まる前であるにも関わらず「本採用になる前に辞めるのが礼儀」というようは発言をされ自ら身を引く場面もあります。
では、本採用と試用期間の何が違うのでしょうか。また、本採用後と試用期間に辞めることと何が違うのか、試用期間で退職することでどんな弊害がおきるのかというところまでお話したいと思います。
試用期間って一体何?試用期間の基礎知識
試用期間とは、みなさんの認識されているように、本採用になる前の試しで働いてみましょうという期間です。
基本的に試用期間を定められるのは6ヶ月以内で、それ以上の試用期間というのは違法とみなされることになると考えてください。
そのため、採用側は本採用の時より解雇をしやすい状況になっています。ただし、試用期間だからといって採用側は簡単に解雇していいわけではありません。
では、どんな理由で解雇できるのかというと、一例としては以下のような明確な理由がある場合とされています。
- 勤務態度が著しく悪い
- 遅刻ばかりする
- 無断欠勤が多い
- 面接で確認した業務能力と大きく解離している
この試用期間が認められている背景として、採用側は、2〜3回面接しただけだと、本当に会社に合う、またちゃんと勤務してくれる人材かを判断するのは困難です。
そのため、実際に働いてもらい、採用した人物が本当にきっちり働いてくれるかを見極める期間として設定が認められているものが試用期間です。
ただし、その解雇事由に関しては、上記の解雇事由の一例からみても本採用であっても実はそんなに変わらないことが分かります。
この試用期間に関しては、採用する側の一定の権利を認めながらも労働者の雇用を守るといういわばどっち付かずのような制度になっているのです。
また、試用期間中であっても14日働いた後に退職させる場合は「解雇予告手当」、すなわち次の仕事を見つけるまでの猶予期間を1ヶ月とし、その1ヶ月分の賃金を支払わなければならないということになっています。
つまり、試用期間というのは、制限だらけである採用側の権利で、入社したダメな社員を解雇することを認められていますが、実質的な試用期間というのは法的な立場からすればたった14日であるということがいえます。
試用期間も本採用も大差はないのです。
試用期間で退職、その時に気を付けること
では、採用された側で気を付けなければならないこと、認識しておかなければならないことはというと、以下の通りです。
- 試用期間中でも退職は2週間前に伝える
- 働いた分の給与は支払われる
- 必要な引き継ぎ等がある場合はしっかりやりきる
つまり、本採用後の退職にかかるフローとなにも代わりがないということです。
確かに入社した当初は試用期間として3ヶ月や6ヶ月といった期間が設定されています。
しかし、それは、上述でお伝えしたように、採用側が採用した人材に対して著しいミスマッチが発生した際の解雇権があるというだけで、採用された側かららすれば本採用と何ら変わりません。
試用期間は契約社員と同じ性質のものではなく、採用側の権利であるだけです。本採用と試用期間は何ら変わらないものと認識してもらっても問題ありません。
試用期間で会社を辞めることは問題がある?
試用期間で会社を辞めることには全く問題はありません。なぜなら、上述のとおり、本採用の正社員と何ら変わらない立場であり、試用期間時にも本採用の時でも労働者にとって辞める権利は平等にあるからです。
ただし、試用期間で退職する際には、その後の転職活動が不利になる可能性があります。不利になる要因については以下の通りです。
- 会社への定着性が疑われる
- 短い職歴がある人が単純に嫌われる
- 短期の在籍での退職に関する説明が求められる
以下、それぞれ補足いたします。
会社への定着性が疑われる
短期的な退職をする方は、採用しても長期的に定着しないと判断されるケースがあります。
なぜなら、採用にはコストがかかりますし、短気でやめる方が増えたら会社の評判が悪くなる可能性もあります。
そのため、試用期間で辞めるような方は採用ターゲットにいれないという見方をする会社が一定数存在しているのです。
短い職歴がある人が単純に嫌われる
中には、会社への定着云々を考えず、短い職歴があるというだけで書類選考を通さないというケースも多くあります。
特に、現場に採用を任せている会社であるほどその傾向は強くなります。
短期退職=悪という昔ながらの価値観が生み出したものであると言えます。
短期の在籍での退職に関する説明が求められる
仮に書類選考を通過し面接に進めた場合であったとしても、面接の際には間違いなく試用期間で退職した背景について問われることになります。
その際、明確で納得感のある退職理由を答えられないと選考において間違いなく選考を通過できない要因となり得ます。
しかも、試用期間で退職したり、試用期間を越えたとしても1年程度で退職した場合は更に転職において不利に働き、いつのまにか転職できなくなったというケースも散見されます。
繰り返してはいけない!試用期間・短期間就労後の退職
試用期間での退職は法的にも問題ありません。転職に際して試用期間、本採用だからということに縛られなくても大丈夫です。
仮に短期で転職活動を始めたとして、面接に苦戦をするものの次の働き口を見つけている方が沢山いるのも事実です。
最も重要なのは、試用期間での退職であったり、1〜2年で職場を転々としてしまわないことです。
一度くらいの転職の失敗であれば、気にしない会社も多くありますが、二度、三度繰り返す人は我慢する力がない、定着性に乏しい、学習能力がないといった見方をされる可能性を孕んでいます。
ちなみに、この状況は優秀な人ほど注意をしなければなりません。なぜなら、優秀でない人であればそもそも企業が転職回数を重ねていたら採用することはありません。
しかし、優秀な人であれば、多少転職回数を重ねて いたとしても、企業は採用に踏み切ります。そのため、10社以上の転職を重ねていますし、中には20社以上の経験をしている方もいます。
そんな方であれば、10社までは転職をできたから、11社目で転職ができないということは考え付かないでしょう。
結果、職務経歴をごまかそうとして、職務経歴を書き換えるのですが、大抵そういう方は過去に転職エージェントを利用しているため、職務経歴から消えている経歴があることを見つけます。
転職エージェントは企業からの信頼が無くなることを恐れ、そういった求職者を相手にしなくなり、更に悪循環を生むということも珍しくありません。
私は大丈夫という意識はどんなに優秀で過去いろんな転職を成功していても当てはまる話なのでそこは注意しましょう。
まとめ
試用期間も本採用も大してかわりません。ほんの少しだけ採用企業側が労働者を解雇しやすくなる権利で労働者側にとっては特段権利関係は変わるません。
それより認識してもらいたいことは、試用期間中で退職することへのリスクです。
早期で退職をすることで、次の転職で大なり小なり選考における不利が発生する可能性が生まれます。
そして、最悪なのが短期的な離職を繰り返すことです。短期的な転職を繰り返すことで、いつしか面接に呼ばれなくなり、時間ばかりが流れていく懸念が増えていきます。
そうならないようにするため、会社選びには明確な基準を持ち、安易な転職をしない、試用期間でやめてしまうような会社に行かないということこそが大事なのです。
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