2013年のアベノミクス以降、日本の景気は一気に好転し、東京オリンピック開催の決定で景気上昇に更なる一押しが加わりました。
その結果採用市場は少子高齢化も合い重なり、有効求人倍率は1,5倍というとんでもない数値を叩き出しました。
しかし、この好景気には陰りが見えてきて、売り手市場の終焉が見えはじめてきました。
では今採用市場では何が起きているのでしょうか。本編では今起きている採用市場の変化についてお話いたします。
空前の売り手市場という言葉はそもそも正確ではない
まず、最初に認識していただきたいこととして、空前の売り手市場という言葉には正確さを欠いているということです。
どういうことかというと、大企業に限定したら全く売り手市場ではないということです。
2019年に実施されたリクルートワークス社の調査によると10000人以上の会社での有効求人倍率は0,3〜
0,4倍に程度であり、むしろ買い手市場となっています。
対して、従業員300人以下の中小企業となると、有効求人倍率は9,0倍を越えます。
また、製造業の有効求人倍率も0,5倍を下回っているのに対して、流通業は7倍を越えています。
すなわち、この売り手市場を支えているのは特定の業界×中小企業であり、それ以外においては決して売り手市場ではありません。
まずはその認識を持っていただきたいです。
景気後退の予兆は出ている
2019年の3月に発表された同年1月の景気動向指数は下げ基調であることが発表されました。
また、このこともあってか、2019年10月に実施予定の消費税増税も見送りになるという話も出ています。
先般のニュースにおいては、安倍総理大臣の側近といわれる政府高官からも公式な見解ではないものの、増税見送りの話が水面下で進んでいることが想定されます。
推測の域を出ない話ですが、景気悪化の予兆は出てきていると言えます。
採用の世界でも採用停止の会社が増えてきている
これまでずっと顕著に売上上昇の一途を辿っていた自動車業界をにも変化が起きています。
それは、100ポジション以上を募集を行っていた自動車部品メーカーが複数社、ほぼ同じタイミングで採用を取り止めることが決まりました。
これも景気減速が背景にあり、他の製造業においても軒並み堅調であった採用活動が、減速しはじめています。
もちろんこれから回復する可能性もありますが、足元は徐々に厳しくなってきていることは間違いなく言えるでしょう。
AI・ITの発達が採用に更なるダメージを与えている
採用にダメージを与えているのは景気だけではありません。AI・ITも採用を減速させている要因の1つです。
なぜかというと以下のような事象が実際起きているからです。
- メガバンクがAI,ITを活用した事業運営にシフト、人員を将来的に削減、2019年から採用数を減少
- 業界全体でMRを削減、医薬情報のIT化
- 海外では、AIを用いた無人のコンビニを運営
では、それぞれ補足を加えていきます。
メガバンクがAI,ITを活用した事業運営にシフト、人員を将来的に削減、2019年から採用数を減少
メガバンク三行(三菱UFJ,みずほ、三井住友)は、
業務の効率化を図るため、業務のIT化を進めてきました。
結果、業務のIT化が進み、人員配置も効率化できるようになってきたことから、これまでのような採用数を確保する必要がなくなりました。
結果、メガバンク3行は2020年4月入社の新卒採用数を計1800人程度とし、2割以上削減することとなりました。
また、将来的には今の行員数の3分の1まで削減する方針を出しています。
かつては花形職業の1つとされた銀行員ですが今後さいよ採用という観点では厳しい状況が予想されます。
業界全体でMRを削減、医薬情報のIT化
元々MRは人工の割に多すぎると言われていました。
それでも新しく発売する薬(以下新薬)が出ることが分かるとと早急に医師、薬剤師に浸透させるためMRの大量採用を行うということを繰り返しました。
しかし、製薬業界全体で新薬の発売は落ち着いた結果、MRの過剰人員が製薬メーカー各社で顕著になったことから、製薬メーカー各社では希望退職を募り始めました。
また、将来的にも採用数は増えないと言われています。その背景としてITで新薬情報を入手する仕組みを提供している会社が増え、今後MRの仕事はITに取って替わられる状況になりました。
既に転職市場には行き先のない40代以上のMRが沢山いらっしゃいます。高年収の代表格という印象の強いMRですが、実は非常に足下が厳しいのが現状です。
海外では、AIを用いた無人のコンビニを運営
通販でお馴染みのアマゾンが、2018年の1月に無人コンビニ「Amazon Go」をシアトルでオープンしました。
また、日本でも2017年に埼玉県の大宮駅で実験的に無人コンビニを設置した背景もあり、店舗の無人化がすすんでいます。
まだまだ本格的に始動するには時間がかかりますが、店舗に店員がいない時代は確実に近づいています。また、同時に雇用の受け皿にもなっている店舗ビジネスに人材を必要としない状況も考えられるということになります。
これからのキャリア形成において考えておくべきこと
上記の例に限らず、景気問題で転職、AI,ITにより仕事が奪われてしまう可能性があります。
そうならないようにするため、以下のことを考えてください。
- 今のキャリアを大切にする
- 絶対的に必要な人材となる
- キャリア転換は早いうちに行う
大原則としてキャリアは継続することが大事です。なぜなら、キャリアは1日では成り立たないものです。そして、強固なキャリアがあり、実績のある方であれば、景気が悪くなっても仕事の依頼があり、一定の成果を出すことができます。
すなわち、外部要因、環境要因で厳しくなったとしても社内外で必要な人になれるよう今の仕事を積み上げていくことが大事です。
もし、自分がそのような人材になれない、またそこまで前向きな気持ちになれないということならば、早めにキャリアチェンジをすることも視野にいれましょう。
ただし、なんとなくキャリアチェンジするだけではだめです。
自分がこの道であれは活躍できるといった目星をつける、辛いこともしっかり飲み込んで、それでもチャレンジしたいという意欲の持てる仕事を早めに見つけていくということが大事になります。
まとめ
空前の売り手市場ということがマスコミで発表され、テレビCM等で人材会社のCMが大々的にうたれていますが、採用市場における現実はかなり厳しいものとなっています。
このような時代を迎え、大切なことは自らの足元を固めていくということです。
少なくとも単純作業を淡々とできるという能力は景気悪化においては、必要性を欠きますし、なによりAI,IT化の時代を迎えるなかで、その仕事はAI,ITに取って替わられると考えてもらってよいでしょう。
これからビジネスパーソンとして生きていくためにはAIやITの力だけでは及ばないなにかを身に付けておく必要があります。
そのAIやITではたどり着けない何かを見つけるためには1にも2にも経験が求められます。経験を積み、会社からどんな状況においても必要と思ってもらえるようになることが重要です。
今、あなたは会社から必要な人だと思われていますか?またそれはどんな状況になってもそれは変わりませんか?またそうなれると思われますか?
真に必要な人になること、それが不景気にも、AI,IT化の時代において必要なことと言えるのです。
コメント