給与明細を見ると「所得税」「住民税」とあり、総支給額から控除されていますよね。所得税・住民税とは何でしょうか。また、金額はどのように決まるのでしょうか。そして年末に行う年末調整はや年度末に行う確定申告は所得税や住民税とどのように関係してくるのでしょうか。
今回は、会社員時代に年末調整業務や住民税の業務を経験した私が、所得税と住民税の仕組みについて紹介します。
所得税とは
所得税は、読んで字のごとく個人の所得に対してかかる税金です。この項目は給与所得者向けの話になります。では、所得税の徴収の対象となる人と、所得税の金額について、詳しく見ていきましょう。
所得税徴収対象者
所得税は、給与の支給額のうち、課税支給額(※)が88,000円以上の方が課税支給額に応じて対象となります。
※課税支給額とは、通勤手当を除いた基本給や残業代、諸手当等の金額です。通勤距離は人によって異なります。通勤手当まで課税にすると、遠いところから通っている人が多く税金かかってしまいまって不公平ですよね。
この所得税は様々なケースにより、徴収金額に変動があります。
扶養家族がいる場合
扶養家族がいる場合は、扶養家族の人数に応じて所得税額が変動します。注意点としては、年少扶養家族(18歳未満の扶養家族)は人数にカウントしないこと、また、障害(知的障害、身体障害、精神障害)のある扶養家族がいる場合は、扶養家族の人数にさらに1を足した人数で計算します。扶養家族が多いほど、所得税額が少なくなります。
そのため、年の途中で扶養者が増えた場合は所得税額が減り、逆に扶養者が減った場合は所得税額が増えます。
また、自身が障がい者の場合は、扶養家族がいなくても、扶養家族が1人という計算となります。
※具体的な所得税額は、こちらを参照ください。→給与所得の源泉所得税額表
賞与を支給した際の所得税について
所得税は賞与にもかかります。賞与にかかる所得税は、賞与を支給する前に支給した給与支給から社会保険料を差し引いた額と、扶養家族の人数により、所得税率が算出されます。
※詳しくはこちらを参照してください。→賞与に対する源泉徴収額の算出率の表
年末調整・確定申告とは
毎年11月から12月に行う年末調整、毎年3月に行う確定申告は、所得税と住民税に密に関わってきます。これらについて詳しく紹介していきます。
年末調整とは
年末調整とは、給与所得者が毎年11月末~12月上旬にかけて行う、給与所得者の1年間の所得税の調整です。生命保険、地震保険等に加入している際はそちらを申告すると、所得税が安くなり、12月支給分の給与で過徴収税額が返還されます。
扶養家族がいる場合は、扶養家族の年間所得を記入する必要があります。特に配偶者を扶養している方は、「配偶者控除」「配偶者特別控除」を受けることができ、12月支給分の給与で過徴収税額が返還されます。また、寡婦(夫)の方も所得税が安くなり、過徴収税額が返還されます。
せっかくなので、昨年から年末調整の方法が変わりましたので、経験者の私からやり方を詳しく紹介します。
●年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
まずは「●年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、給与所得者の氏名、生年月日、世帯主、世帯主との続柄、住所、配偶者の有無、マイナンバーを記入し、氏名の横に捺印します。※扶養家族がいない、生命保険、地震保険等何も入っていないという方はこれだけで終わりです。
扶養家族がいる場合は、扶養家族の氏名、生年月日、続柄、住所(同居の場合は同上で構いません。)、所得金額(※)を記入します。16歳未満の扶養家族がいる場合は、下の欄に記入してください。また、本人または扶養家族に知的障害、身体障害、精神障害があるという方は、その旨を記載し、障がい者手帳の写しをコピーして会社に提出してください。寡婦(夫)の方は、チェックを入れて下さい。
※所得金額は、収入金額ではなく、収入金額から必要経費を引いた金額のことです。
所得の計算方法はこちら→所得計算方法(2ページ目に記載)
●年分給与所得者の配偶者控除等申告書
配偶者を扶養している方は、「●年分給与所得者の配偶者控除等申告書」を記入して提出する必要があります。
まず、右上に自身の氏名と住所を記入し、氏名の横に押印します。次に、自身の配偶者の氏名、マイナンバー、生年月日を記入してください。その後、自身の収入と、控除額、所得金額を記載してください。所得金額は所得計算方法(2ページ目に記載)に基づいて算出してください。同様に、配偶者の収入と控除額、所得金額を記載してください。
注意点
- 会社に勤務して得た収入は1の「給与所得」、「年金」は3の雑所得に記入してください。
- 計算した結果、所得金額がマイナスになる場合は所得金額は0円としてください。
次に、「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」の横に所得金額を記入し、横の当てはまる箇所にチェックを入れてください。その後、配偶者の本年中の合計所得金額の見積額を記入し、その下の当てはまるものにチェックを入れてください。
給与所得者の(A)~(C)、配偶者の①~④から、配偶者控除額、配偶者特別控除額を求めます。例えば給与所得者が(A)で配偶者が②の場合は、配偶者控除額が38万円となりますので、「配偶者控除額」欄に38万円と記入してください。
●年分給与所得者の保険料控除申告書
生命保険、地震保険に加入している方、中途入社で社会保険料を支払った方、小規模企業共済等掛金控除に該当する方は、「●年分給与所得者の保険料控除申告書」を記入して提出する必要があります。
生命保険、地震保険に加入している方は、年末調整の時期が近くなると、1年分の保険料支払い額が郵便で届きますので、そちらを元に記入し、申告書と一緒にその届いた金額の証明書を提出してください。
記入する際の注意点を何点かお伝えします。
- 生命保険料の証明書は、「9月時点でお支払いいただいた金額」と「年内支払金額」の2種類の金額が記載されています。こちらは、年内支払金額の方を記入してください。
- 一般の生命保険料については、新旧を誤らないように注意してください。
確定申告とは
確定申告とは、自営業者やフリーランス等が毎年3月頃に管轄の税務署に対して行う自身の収入と必要経費の申告業務です。その収入と経費の申告を元に、所得税額が決まり、所得税を支払います。また年末調整と同様に、生命保険等に加入している場合は、そちらを申告すると所得税額が安くなります。
さらに、年末調整を行った給与所得者が、年末調整で生命保険料の申告を忘れた際に、確定申告で生命保険料の申告を行うことによって、所得税がいくらか返還されます。
住民税とは
住民税は、地方自治体による行政サービス(福祉や防災等)の資金確保のために徴収されます。給与所得者は、基本的に特別徴収という形になり、給与から住民税を天引きする形になります。自営業者やフリーランスの方は、普通徴収という形で年に4回、6月末、8月末、10月末、1月末に納付する形になります。
住民税の金額は、給与所得者は、毎年1月下旬に前年度の所得、保険料等の控除額、扶養親族の有無を各市町村に会社の総務担当の方が申告し、5月中旬頃に各給与所得者に住民税額の通知がされます。生命保険に多く加入している方、扶養家族が多い方は住民税が安くなります。自営業者やフリーランスの方は、確定申告の内容を元に金額が決まります。
また、下記の方は住民税の徴収対象外となります。
- 未成年の方
- 障がい者
- 生活保護受給者
- 寡婦(夫)で前年の所得が125万円以下だった方
- 前年の合計所得金額が市町村の定める金額(※)以下だった方(特に扶養内パートの方に多いです)
※市町村によって異なりますので、詳しくは自身が在住している役所、役場のホームページをご覧ください。
給与所得者は、基本的に住民税の特別徴収が義務付けられています。もし、普通徴収の方で新たに就職をしたという方は、総務担当者に連絡し、普通徴収から特別徴収に切り替えるようにしてください。
まとめ
- 所得税は、給与支給額、扶養家族の人数、障害の有無、によって決まります。
- ただし、毎月徴収している所得税は概算のため、年末調整で所得税額を調整します。
- 住民税は、昨年度の収入、扶養家族の人数、障害の有無で決まります。(未成年者、障がい者、生活保護受給者等は対象外)
所得税、住民税の仕組みが気になるという方は、こちらを参考にしていただけると幸いです。
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