台風の当日は酷い風雨にさらされ、外出もできない状況になっていました。多くの店舗では台風当日は営業を取りやめるなど、労働者の安全性の担保を大事にした会社、お店も多数ありましたが、なかには台風の日でも出勤を命じられた、アルバイトにおいても、台風の日にピザのデリバリーを頼まれた、コンビニ店員においては台風当日にも営業を命じられたというような事例がありました。
このような場合、出勤時、また仕事中に危険な状況を生み出してしまいます。
実際、天候が著しく悪い中車を運転し、浸水に飲み込まれた、台風にあおられてバイクが横転したなどということも発生し、労働者の安全が脅かされています。
では、もしこのような安全が脅かされるような状況の中で働かなければならないとなった場合どうすればいいのか本編ではお話をさせて頂きたいと思います。
使用者は労働者に対して安全配慮義務がある
まず、大前提として、労働契約法という法律には、使用者、すなわち会社や店舗のオーナーに対しては労働者に対して安全配慮義務、すなわち従業員の安全を第一に考えなければならないということになっています。
また、安全配慮義務は大きく作業環境と健康管理の2つについて配慮しなさいということになっています。
では、それぞれどういったものなのかについて説明をしていきたいと思います。
作業環境
作業環境とは、名前の通り、安全な環境で働けるように働けるように会社は配慮しなければならないという考え方です。
そのため、従業員が工場でケガをしないように設備の点検、必要に応じて新しいものを購入するようなことであったり、冒頭の台風を例にとれば、台風の日にデリバリーを受け入れない、そもそも出勤時に危険が伴うため出勤させないというのも安全配慮義務における作業環境の配慮ということになります。
健康管理
会社や店舗のオーナーは健康に働けるようにも配慮しなければならないこととなっています。
そのため、過重労働をさせないことはもちろんとして、作業場の粉塵で内臓に疾患がでないように、また、しっかり換気ができるようにといったところにまで配慮義務があります。
また、最近は精神疾患にかかる方も多くいらっしゃるので、メンタルチェックなども会社がやらなければならないこととして位置付けられています。
休業補償についても相談できる
アルバイトや派遣社員など非正規雇用の方にとっては、仕事を休みたくとも日々の生活がかかっていることを理由に休みたくとも休めないという方も一定数いらっしゃることでしょう。
それに対して全額とはいわないまでも休業補償、すなわち会社側、お店側が働けなかった分の給料を一部支払うことを休業補償といい、厚生労働省もこれを推進しています。
そのため、台風で働けなかったという場合はしっかり交渉を行うことで休業補償をしてくれる場合もでてきます。
雇用保険の適用対象にもなりうる
災害救助法の適用地域における雇用保険の特別措置という言葉をきいたことがありますでしょうか。
従来であれば、毎月の給料から天引きされている雇用保険については、会社を退職した後、一定の手続きと職業訓練を受けることで、年齢に伴う給与のかけ率を失業保険として支払ってもらえるようになることになります。
しかし、先般甚大な被害を受けた台風や大雨などで、事業継続ができなくなった場合においては、特別措置として雇用保険から失業保険のような形で国からお金を受けとることができるケースがあります。
これが災害救助法の適用地域における雇用保険の特別措置というものになります。
実際に千葉県の一部地域に住んでいらっしゃるかたにおいて受けられているかたもいらっしゃいます。
適用できるケースが限られていますが、職場に甚大な被害が起きている、または台風被害により働けていないかたにおいては、こういった補償を受けられると良いでしょう。
労災、損害賠償を受け取れる
台風の中で、車に乗らなければならない、また宅配ピザ等のデリバリーを業務で命令を受けた、また出勤、退勤時に台風等の影響で怪我をした場合には労災認定の対象にもなりますし、場合によっては職場に対して監督責任の過失を理由に損害賠償請求をできるばあいもあります。
労災保険に関しては、従業員を採用するに辺り、業務中の怪我にかかる治療費や、休まざるを得なかった日の給料の一部、もしくは万一台風の影響で志望事故に繋がってしまった場合は、遺族に対して死亡保障等を支払ってもらえる社会保険制度です。
労災保険に関しては、会社や店舗側の協力が必要となりますが、保険給付の申請そのものは、本人が労働基準監督署に足を運んで実施してもらうこととなります。
もし、会社や店舗側が協力を拒否した場合については会社の協力なしでも労災認定を受けることができますので、もしも会社から労災認定に関する手続きをしてもらえない場合は労働基準監督署に相談をしましょう。
そもそも台風の場合には仕事を拒否していい
そもそも、正社員においても、アルバイトにおいても台風を理由に仕事を拒否しても問題ありません、
なぜなら、台風で交通状況が安定しない、また暴風でケガの可能性も十分考えられます。そのことを考えると出勤しないという選択肢は非常に合理的な判断であるといえます。
しかし、雇用側、すなわち会社や店舗側がそれを認めず、出勤を拒否したことを理由に解雇や減給といった懲戒処分をされるという可能性もあります。
ただし、この台風による出勤拒否を理由とした懲戒処分はは認められません、
なぜなら、懲戒処分について、労働契約法においては、懲戒処分に対しては客観的に合理性がない場合は無効であるということを規定しています。
上述の通り、台風で出勤できないというのは、きわめて社会通念上当然であると考えられますので、明らかな権利の濫用であると考えて良いでしょう。
そのため、このようなことが発生した場合は、労働基準監督署に相談をしましょう。
そもそも台風で安全配慮をしない職場は働く場所としてふさわしくない
2019年には大きな台風が2本千葉を中心とした関東を襲い、その後も大雨が降るなどかなり甚大な被害を与えましたが、このような状況の中で出勤を拒否できない、自身の安全を案じてくれない会社というのは普通に考えて働くべき会社であるとはいえません。
筆者においても以前在籍した会社において、台風で出勤が遅れた社員に対して、台風が来るのが分かっているのだからなぜもっと早く出勤しないのかということを経営側が述べたり、その前に在籍した会社においては大雪で交通機関が機能しない状況の中で出勤が遅れたことを理由に、反省文の提出が求められました。
しかし、このような対応は本当に正しいのでしょうか。このような自然災害の場合、会社は安全配慮義務を第一優先し、社員を出社させない、場合によっては休業するというのが正しいのではないでしょうか。
もし、このような安全配慮義務を欠くような命令を出してくる会社で働き続けなければならない労働者というのは不幸だといえますので、可能であれば早めに転職をする、別のアルバイト等を探すなどして、安全配慮義務をきっちり履行してくれるところで働くということが重要であるといえます。
今働いている自分の職場はしっかり自分の安全配慮をしてくれる会社でしょうか。今一度確認しましょう。また、安全配慮義務を果たさず危険な仕事をさせる、それで怪我をさせられたら必要な対応を行っていきましょう。
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