日々残業・・・半端ない残業時間。しかも残業代がついていない!
このようなサービス残業、みなし残業をしている方、いませんか?
今回は労働基準法で規定されている残業の法律と、サービス残業とみなし残業代は回収できるのかを紹介していきます。
労働基準法での残業時間・残業代の規定
残業時間の規定
労働基準法では、まずは使用者(会社の代表者や役員、管理職)が労働者に極力残業をしないようにすることが求められています。
もし、それでも繁忙期があり残業をしないといけないという場合に、労使協定を結んで管轄の労働基準監督署に届け出をすることによって残業が可能です。これが労働基準法第36条で規定されていることから、36協定と呼ばれます。
ですので、36協定を結んで管轄の労働基準監督署に届け出をしないと、残業が認められません。
そして、勘違いしないでいただきたいのは、36協定を締結して労働基準監督署に届け出をしたら、残業をし放題ということではありません。締結内容に1か月●時間まで、1年に○時間までと締結するため、使用者はその締結した内容を越えて残業をさせてはなりません。
※業種の中には、農林水産業、飲食業等、この法律が適用除外となる業種もあります。その業種は36協定の締結と届け出は不要です。
残業代の規定
次に、残業代の規定について説明します。
残業は「時間外労働」「休日労働」「深夜労働(22時~翌5時)」の3種類あります。残業代を支給する場合は、下記のように割り増しをして残業代を支給しなければいけません。
- 時間外労働・・・1.25倍
- 休日労働・・・1.35倍
- 深夜労働・・・1.5倍
サービス残業・みなし残業代は回収できるのか
では、本題に入ります。サービす残業・みなし残業代は回収できるのでしょうか。
・あなた裁量労働制で働いているでしょ?最初から残業代なんてないよ?
・うちは固定残業代として決まった金額を毎月払うという形をとっているからもう払ってるよ。明細を見てごらん?
残業代を払わないブラック企業は、上記のように言い逃れをしようとします。しかし、労働者は「労働した分の労力の対価を得る権利」があります。
社会についてまだ詳しくない新社会人等は、上記の言い逃れを聞いてそれで納得してしまうかもしれません。しかし、残業代の未払いは労働基準法第119条違反です。ですので、労働者には未払いの残業代を請求する権利があります。
では、次項から未払い残業代の手順を説明していきます。
未払い残業代の請求の留意点
未払い残業代の請求の手順を説明していきますが、まず注意点が1つあります。
未払い残業代の請求は2年経過すると時効になってしまいます。
ですので、残業代がおかしいなと思ったらすぐに行動に移しましょう。
残業代の計算方法
では、残業代の計算方法を説明します。
例えば給与が月額支給の場合で、総支給額20万円(残業代は除く)としましょうか。
この20万円を1カ月の所定労働日数22日で割ります。さらに、それで算出された数字をさらに1日の所定労働時間7時間で割ります。これが、時間給です。
(例)200,000円÷22日÷7時間=約1,299円
この場合は時間給が1,299円です。
ここに、時間外労働をした場合は、1,299×時間外労働をした時間×1.25をしてみてください。
休日労働をした場合は、1,299×休日労働をした時間×1.35をしてみてください。
深夜労働をした場合は、1,299×深夜労働をした時間×1.5をしてみてください。
これで算出された数字が、本来支払われるべき残業代です。
明らかにおかしいなと思った場合は、すぐ給与担当者に確認しましょう。
未払い残業代の請求が可能な10パターン
まず、未払い残業代の請求が可能なケースを見ていきましょう。パターンは10個あります。
- 法定労働時間(1日8時間以内、1週間40時間以内)を越えて働いているにもかかわらず、残業代が全く支払われていない、また1.25倍割増しで支払われていない場合
- 深夜労働(22時~翌5時)をしたのにも関わらず、残業代が全く支払われていない、また、1.5倍割増しで支払われていない場合
- 休日労働をしたにもかからわず、その分の賃金が全く支払われていない、また、所定休日は1.0倍割増し、法定休日は1.35倍割増しで支払われていない場合
- 本来であれば労働時間にカウントされるはずの時間(待機時間、移動時間等)が労働時間数としてカウントされていない場合
- 退勤後も自宅で業務を行っている場合
- 名目は経営者と一体となる管理監督者でも、実際は名ばかりの管理職の場合
- 裁量労働制(※1)でも深夜労働の残業さえ支払われていない場合(使用者は、裁量労働制の方にも、深夜労働の場合は1.5倍割増しで残業代を支払う義務があります。)
- そもそも裁量労働制と企業から言われていても、裁量労働制の要件を満たしていない場合
- 変形労働時間制(※2)を取っている企業でも、1カ月や1年単位で見たときに所定の労働時間を越えている場合
- 固定残業制を取っており、何時間残業しても残業代が毎月一定の場合
未払い残業代の請求が不可能な8個のパターン
次に、残念ながら未払い残業代が請求できないケースを見ていきましょう。パターンは8個あります。
- 事業所外のみなし労働の場合(外回りの営業職等)
- 裁量労働制で5時~22時の間に勤務している場合
- フレックスタイム制(※1)を取っている場合
- 固定割増賃金制度(※2)を取っている場合
- 労働基準法で定められている管理監督者の場合
- 天候や自然条件、災害に左右される業種の場合(農林水産業等)
- 断続的業務の場合(運転手等)
- 公務員の場合
未払い残業代を請求するにあたり
未払い残業代が請求できる10パターンのどれかに該当する方は、早速行動に移しましょう。
ここで、未払い残業代を請求するにあたっての2つの留意点を説明します。
残業代が支払われていないという証拠をきちんと残すこと
まずそもそも、残業代が支払われていないという動かぬ証拠がないと、残業代の請求ができませんよね。そこで、下記の書類を揃えておきましょう。
- 雇用契約書
- 就業規則の写し
- タイムカードや日報
- 残業時間中のメール等、時間が記録されているもの
- 給与明細書
雇用契約書には、労働者の勤務時間、残業をした場合の賃金等、労働条件が記載されています。こちらは必ず残しておきましょう。
また、就業規則の写しも可能であればとりましょう。もしかすると、残業代の他にも、労働基準法で定められているはずの規定が就業規則に記載がない、ということもあり得るかもしれません。
タイムカードや日報、給与明細書はもちろんのこと、もし残業時間中にメールのやりとりをしたら時間が記録されます。また、WordやExcelを使用して保存した場合は、最終更新年月日と時間が残ります。こちらも残しておきましょう。
1人で抱え込まないこと
残業代を請求するという行動は当事者本人だけでは不安でしょう。企業にうまく言いくるめられてしまっては泣き寝入りすることになってしまいます。
そこで、お金はかかってでも弁護士等の専門家に相談し、また、残業代を請求する際にも同席してもらうようにしましょう。
まとめ
- 未払いの残業代があれば、条件を満たしていれば請求可能
- 請求するために、証拠書類を集めておくこと
- 1人で行動せず、弁護士等の力を借りると良い
給与が支給されたら、自身で一度残業代を計算してみてください。あれ、おかしいなと思ったら給与担当者に連絡しましょう。また、ずっと残業代の支払いがない場合は早めに行動しましょう。2年で時効になってしまいます。
残業代が支払われないことでお悩みの方は、こちらを参考にしていただけると幸いです。
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