女性の方は、人生の中で妊娠、出産を経験する方もいます。そして、女性の社会進出が進んでいる日本の現代では、出産しても家計のために働きたい、という人も少なくないでしょう。
そのような方のために、「育児休業給付金」「出産手当金」「出産育児一時金」という制度があります。今回はこれらの制度について紹介していきます。
育児休業給付金
まずは、育児休業給付金について紹介していきます。
概要
育児休業給付金は、ハローワークに申請をして給付を受けます。
この育児休業給付金を受けられる条件は下記の通りです。
- 雇用保険の被保険者であること
- 雇用保険の加入期間が2年以上あり、休業前2年間のうち給与の支払いを受けた日数が11日以上ある月が12か月以上あること
- 被保険者が養育する子が、1歳又は1歳2か月未満であること(パパママ育休プラス制度を利用する場合は1歳2か月まで延長可能)
- 育児休業期間中、1か月ごとに休業開始前の1か月あたりの給与の8割以上の給与の支払いを受けていないこと
- 育児休業期間中に勤務した場合は、1か月80時間以内の勤務であること
これらすべての条件を満たしている方が、育児休業給付金を受けることができます。
給付金額
原則、休業開始前の給与の日額、すなわち賃金日額(育児休業開始前6か月の給与の合計/180日)×支給日数×67パーセント(6か月後以降は50パーセント)となります。
もし、賃金日額×30日の金額(賃金月額)が449,700円を超える場合は、賃金月額は449,700円となります。また、賃金月額が74,400円を下回る場合は、賃金月額は74,400円となります。
要するに、賃金月額の最高は449,700円、最低は74,400円です。 (令和元年5月26日現在)
では、実際に受けられる給付金額を計算してみましょう。
例:賃金月額が300,000円の場合
300,000円/30日=10,000円(賃金日額) 10,000円×0.67=6,700円 6,700円×30日=201.000円
すなわち、6か月まで受けられる給付金の月額は201,000円となります。
6か月以降は、10,000円×0.5=5,000円 5,000円×30日=150,000円
6か月以降受けられる給付金の月額は150,000円となります。
申請方法
ハローワークから会社に「育児休業給付金支給申請書」、初回の場合は「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」が交付されますので、必要事項を記入して、会社に提出してください。
その後、会社が出勤簿や賃金台帳を添付してハローワークに提出します。
出産手当金
次に出産手当金について紹介していきます。
概要
出産手当金は、出産のために会社を休み、給与を受けられない場合に生活の保障をするという目的で支給されます。こちらは全国健康保険協会(協会けんぽ)に申請を行います。
この出産手当金を受けられる条件は下記の通りです。
- 被保険者が出産する、もしくは出産したこと(※被扶養者の出産は対象外です。)
- 妊娠4カ月以上の出産であること(早産、流産、人工妊娠中絶も対象となります。)
- 出産のために仕事を休み、その期間中に給与の市支払いを受けていないこと
これらすべての条件を満たしている方が、育児休業給付金を受けることができます。
また、会社を退職してから出産した場合も、次の2つの条件を満たしていれば支給の対象となります。
- 退職前に健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
- 被保険者の資格喪失日(退職日の翌日)の前日に出産手当金を受けているか、または受けられる状態にある場合
給付金額
給付にあたっての支給期間ですが、こちらは2種類に分かれます。
- 出産予定日、出産予定日より前に出産した場合
- 出産予定日より遅れて出産した場合
まず、出産予定日、出産予定日より前に出産した場合は、出産前の42日間、出産後の56日間、計98日間が支給期間となります。
出産予定日より遅れて出産した場合は、出産予定日前の42日間、出産予定日から出産日までの期間、出産後の56日間の合計が支給期間となります。
次に給付日額ですが、こちらは出産手当金の支給開始日前の1年間の各月の標準報酬月額(※)の平均額/30日×2/3となります。
※社会保険料のランクのことです。例えば、月の収入が20万円の場合、標準報酬月額が200千円となります。詳細はこちら→全国健康保険協会ホームページ
では、出産手当金の支給開始日前の1年間の各月の標準報酬月額が150千円の場合で計算してみます。
標準報酬月額150千円は150,000円なので、150,000円/30×2/3≒3,333円です。
ということで、出産予定日、出産予定日の前に出産した場合は、3,333円×98日=326,634円合計で受け取ることができます。
もし、例えば出産予定日より4日遅れて出産した場合は、3,333円×102日=339,966円合計で受け取ることができます。
申請方法
全国健康保険協会より申請書をダウンロードし、記入の上、自身がお住いの都道府県の全国健康保険協会に郵送します。申請書は3枚ありますが、2枚目は医師・助産師に記入していただく欄があり、3枚目は会社が記入する用紙です。忘れずに証明をもらいましょう。
添付書類は基本的には不要ですが、支給開始日以前1年以内で勤務先が変更になった方は、以前の勤務先の名称、住所、在籍期間がわかるものの証明書が、また、万が一被保険者が亡くなった場合は相続人の方が申請をすることになり、被保険者との続柄がわかる戸籍謄本等が必要です。
出産育児一時金
最後に、出産育児一時金について紹介します。
概要
こちらは被保険者、または被扶養者が出産をしたときに申請して受け取れる給付金です。こちらも全国健康保険協会に申請します。
この出産育児一時金を受けられる条件は、被保険者又は被扶養者が妊娠4カ月以上で出産したこと(早産、流産、人工妊娠中絶も含む)です。
また、会社を退職してから出産した場合も、次の2つの条件を満たしていれば支給の対象となります。
- 退職前に健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
- 被保険者資格喪失後(退職日の翌日以降)、半年以内に出産したこと
給付金額
基本的には、42万円です。双子、三つ子等を出産した場合は、出産した人数分支給されます。
ただし、産科医療保障制度に未加入の医療機関で出産した場合と妊娠22週未満で出産した場合は40万4千円となります。
申請方法
全国健康保険協会より申請書をダウンロードし、記入の上、自身がお住いの都道府県の全国健康保険協会に郵送します。申請書は2枚ありますが、2枚目は医師と助産師、市区町村の証明欄がありますので、忘れずに証明をもらってください。
また、申請書と同時に、直接支払制度を利用していないことの証明書のコピーと、産科医療保障制度の対象分娩の場合は、その旨の領収書、明細書(所定の印があるもの)のコピーを同封してください。
国民健康保険に加入している方は?
国民健康保険に加入している方は、出産育児一時金のみ申請が可能です。給付金額は35万円~42万円で、各市町村によって異なります。
手続き方法は、各市町村に確認してください。
まとめ
- 育児休業給付金は、1歳未満、または1歳2か月未満の子供の育児をする人のためにハローワークに申請をして支給される給付金である
- 出産手当金は、出産のために休んだ分(出産前42日間、出産後56日間)給与の支払いがない場合に全国健康保険協会に申請をして支給される給付金である
- 出産育児一時金は、出産をしたのち、全国健康保険協会に申請をすると、42万円または40万4千円支給される給付金である
- 国民健康保険加入者は、出産育児一時金のみ各市町村に申請をすることができる
女性の社会進出が進んでいる現代、これらの3種類の給付金は働く女性の強い味方となってくれます。出産しても働きたいという方はこちらを参考にしていただけると幸いです。
END